内製の実務

労務管理システムを内製するとき、
先に決める3つのこと。

勤怠や社員マスタまわりの仕組みを自社で作ろうとすると、たいてい「どんな画面が要るか」から議論が始まります。ただ、後から作り直しになるのは画面ではありません。データの持ち方と、人の出入りの扱いです。グループの管理部が主体で社内基幹を構築したときに、先に決めておいてよかったことを3つ書きます。

公開 2026年9月8日更新 2026年11月3日著者 小屋淳/AI事業部マネージャー最適AI株式会社

先に結論:機能より先に決める3つ

① 社員情報の正本をどちらに置くか。二重入力が発生する時点で、遅かれ早かれ数字が食い違います。

② 退職・異動をどう流すか。入社より、抜ける側の設計のほうが漏れます。

③ 承認をどの画面でやるか。新しい画面を増やすほど、使われなくなります。

① 社員情報の正本をどちらに置くか

多くの会社には、すでに人事労務のクラウドサービスが入っています。そこに社員情報があるのに、新しく作る仕組みにも社員名簿を持つと、 同じ情報が2か所にある状態になります。片方だけ直されて、もう片方が古いまま残る。これは「気をつける」で防げる種類のものではありません。

グループ会社の最適でんき(電力小売)などグループ各社で作ったときは、人事労務クラウド側を正本と決め、自前のシステムは取り込む側に徹しました。 社員情報は自動で入ってくるようにして、手で入れ直すことはしていません。決めたのは機能ではなく、どちらが正しいかの順位です。

ここで迷ったら:「両方で編集できるようにしておく」がいちばん危険です。どちらか一方を読み取り専用にしてください。不便に見えても、食い違いを人が直す手間より軽く済みます。

② 退職・異動をどう流すか

入社の流れは誰でも設計します。抜けるほうは忘れられがちです。ところが実務で困るのは、たいてい抜けた側です。

たとえば備品の担当者を選ぶ画面。ここに退職者が残っていると、退職した人に貸出中のままの機材が積み上がります。 そこで在籍状態を持たせて、退職した人は選択肢そのものに出さないようにしました。 画面から消えれば、運用ルールで気をつける必要がなくなります。

異動も同じで、所属が変わったときに承認の宛先が自動で変わるのか、誰かが手で直すのかを最初に決めておきます。 ここを曖昧にすると、辞めた人や異動した人のところで承認が止まります。

③ 承認をどの画面でやるか

承認機能を作ると、たいてい「承認画面」を新設したくなります。ここでは逆にしました。 承認は、社員が普段使っているビジネスチャットの上で完結するようにしています。専用画面を開かせません。

理由は単純で、開かない画面は存在しないのと同じだからです。1日に1回開くかどうかの画面に承認を置くと、承認待ちが滞留します。 すでに全員が見ているところに通知と承認ボタンを置くほうが、実際に回ります。

作る前に、この順番で紙に書く

決めること決め方
社員情報の正本既存の人事労務クラウドがあるならそちらを正本にし、新しい仕組みは読み取り側に徹する
在籍状態の扱い退職・休職を状態として持ち、選択肢に出す/出さないを画面側で制御する
承認の場所すでに全員が毎日開いているツールの上に置く。新しい画面を作らない
止まったときの担当「社内システムだから影響が小さい」は成り立たない。日常業務に食い込む分むしろ大きい

作れることと、持ち続けられることは別

業務を一番よく知っている部署が主体になると、仕様を詰める会議はほとんど要らなくなります。実際、この社内基幹は開発部門ではなく 管理部(総務)が主体で構築しました。作るところは進みます。

つまずくのは、その後を誰がどう支えるかを決めていなかったときです。作った人に依存しやすくなること、権限設計を後回しにできないこと、 バックアップが「取れているつもり」になりやすいこと。どれも「作る」の話ではなく「持ち続ける」の話で、外から点検を入れるほうが現実的でした。

よくあるご質問

労務管理システムを内製すると、人事労務クラウドは解約できますか?

解約を前提にしない進め方をおすすめします。社員情報の正本を人事労務クラウド側に置き、内製した仕組みは取り込む側に徹するほうが、二重入力による食い違いが起きません。内製の目的は置き換えではなく、自社固有の業務に合わせた部分を自分たちで持つことです。

エンジニアがいない部署でも作れますか?

業務を一番よく知っている部署が主体になれます。実際にグループ各社の社内基幹は開発部門ではなく管理部(総務)が主体で構築し、グループ全社で運用しています。ただし「作れる」と「安全に運用し続けられる」は別の話で、権限設計やバックアップの点検は外から専門家を入れる分け方が現実的です。

最初にどこから手をつければよいですか?

画面ではなくデータの経路からです。社員情報がどこから入ってくるかを先に通し、それから画面を作り込みます。逆にすると、きれいな画面はできたのに中身が空、という状態になりがちです。

「これ、自分たちで作れるのか?」の判断から

作るべきか、買うべきか、頼むべきか。その線引きから一緒に整理します。研修・開発・顧問はそれぞれ単独でご契約いただけます。現場に入り込んで実装まで担う関わり方は FDE(現場伴走・実装支援) としてご提供しています。

本ページは、グループ会社の最適でんき(電力小売)をはじめとするグループ各社が自社業務のために構築・運用している社内システムの実例をもとにしています。グループ各社の法人名、社内の規模を示す具体的な数値、担当者名、連携している外部サービスの製品名、システムの識別子やセキュリティ項目の個別名称は記載していません。
用語の意味を確かめたい場合は AI用語集(260語・無料) をご利用ください。

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