グループ各社の実践記録

「重複しています」と
伝えるだけで、営業先が漏れます。

代理店を通した申し込みでは、同じお客様に複数の代理店が当たることがあります。重複を知らせる機能は親切に見えますが、 伝え方を間違えると「どの代理店がどこを押さえているか」を外から数え上げられる状態になります。 代理店管理の仕組みをグループ会社の最適でんき(電力小売)で作り直したときに、突き合わせのキーをどう決め、何をどこまで知らせるかをどう線引きしたのかを公開します。

公開:2026年8月24日 対象:代理店管理・パートナー営業部門 状態:本番稼働中(本部で運用・代理店への公開時期は未定)

この事例の要点

① 照合のキーをお客様の氏名や住所ではなく、供給地点特定番号(22桁)の1つに統一した。名寄せ(表記が揺れた氏名や住所を、同じお客様として突き合わせること)をやめた。

② 重複は「ある」ことだけを知らせ、押さえている代理店の名前は出さない。名前を出すのは本部と、自分のスコープ内の重複だけ。

③ 警告文にお客様の氏名を入れない。この文字列はレスポンスのヘッダーに載るため。

何が困っていたのか

代理店ビジネスでは、案件が1つの入口から入ってくるわけではありません。代理店のポータルから登録されるもの(代理店への公開後)、本部で直接受けるもの、 基幹側から流れてくるもの。入口が違えば、書き方も揃いません。

その状態で「この案件、もう別の代理店が動いていないか」を判定しなければなりません。ところが お客様の氏名や住所で突き合わせようとすると、必ず取りこぼします。 法人名の株式会社が前か後ろか、ビル名が入っているかいないか、番地がハイフンか漢数字か。人が入力する項目は必ず揺れます。 揺れる項目を鍵にした瞬間、同じ相手が別人として通ってしまいます。

突き合わせのキーを1つに決めた

電気の契約には供給地点特定番号という22桁の番号があります。場所に対して一意に振られていて、表記の揺れがありません。 これを、システム全体でただ1つの突き合わせキーに決めました。

突き合わせに使う候補採否
お客様の氏名・法人名不採用 — 表記が揺れる。同姓同名もある
住所不採用 — 建物名・番地の書き方で割れる
社内で採番したID不採用 — 入口ごとに別々に振られてしまう
供給地点特定番号(22桁)採用 — 場所に一意。表記が揺れない

案件・供給地点・手数料・単価の予約。番号を持つ側のデータには、すべて同じキーで索引を張りました。 「同じものを同じと判定する鍵を、業務全体で1つに決める」——やったのはこれだけです。 仕組みが複雑になるのは、たいてい鍵が複数あるときです。

ここが、この事例でいちばんお伝えしたい点です。

よかれと思って考えた通知が、そのまま情報の抜け道になるところでした。

重複を知らせる機能が、抜け道になる

重複を検出したら代理店に知らせる設計にしています。二重に動いて両方が無駄になるのを防ぐためで、これ自体は必要な機能です。 問題は何を書くかでした。

当初は「この供給地点は、すでに◯◯代理店が押さえています」と出すつもりでいました。親切だと思ったからです。 ところがこの供給地点特定番号は、お客様の手元に届く検針票に印字されています。つまり誰でも知り得ます。

すると、こうなります。代理店が任意の番号を入れて案件登録を試すと、 「その場所をどの代理店が押さえているか」が1件ずつ返ってきます。番号を変えて繰り返せば、 他の代理店の営業先を外から数え上げられてしまう。同じ本部の下にいる代理店同士で、営業機密が越境します。

そこで、開示の範囲を次のように分けました。

見ている人知らせる内容
本部重複の存在+押さえている代理店名
代理店(重複が自分の案件だった場合)重複の存在+自社名
代理店(重複が他社の案件だった場合)重複の存在と保護期間のみ。名前欄そのものを出さない

細かい点ですが、開示できないときに「(不明)」のような括弧書きも付けていません。 名前欄が存在すること自体を見せない、という判断です。空欄を見せると「誰かが押さえている」以上の手がかりを与えてしまいます。

あわせて、この警告文にはお客様の氏名を渡していません。 文字列がレスポンスのヘッダーに載る作りだったためで、必要のない個人情報は最初から関数に入れない、という形にしました。

この事例から言えること

  • 名寄せを頑張るより、揺れない鍵を1つ選ぶほうが速い。人が打つ項目は必ず揺れます。機械が振った番号を探してください。
  • 「教えてあげる」機能は、権限設計とセットで考える。1件ずつなら親切でも、何度でも試せるなら一覧を配っているのと同じです。
  • 誰から見た画面かで、出す情報を変える。同じ組織の中でも、立場が違えば見てよい範囲は違います。社内システムほどここが曖昧になりがちです。
  • 権限まわりは、機能を作り終えたあとで足すと漏れます。既製品を入れるか自社で作るかの判断軸は「代理店管理システムは、内製と既製品のどちらを選ぶか」に整理しています。作りながら「この画面を悪用するなら自分ならどうするか」を一度考えるほうが、あとの手戻りが小さくなります。

本ページは最適でんきが自社の代理店ビジネスのために構築・運用している代理店管理システム「最適PRM」の実例です。 置き換え前に利用していたサービスの製品名、代理店名・お客様の情報、取り扱い件数や手数料額などの内部の数値、 保護期間の設定値は記載していません。

「誰に、どこまで見せるか」から整理します。

代理店ポータルや取引先ポータルは、作る機能より見せてよい範囲の線引きのほうが後から効いてきます。まずは現状の業務と、どの情報が誰に届いているかをお聞かせください。研修・開発・顧問はそれぞれ単独でご契約いただけます。当社は、こうした内製を外から支える関わり方をFDE(現場伴走・実装支援)としてご提供しています。

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